大腸の疾患

大腸がん

がんによる死亡原因の内、男女問わず圧倒的に数が多いのが大腸がんです。血縁者に大腸がんになった経験がある方がいる時は、がんの発生確率が高くなりやすいので、注意しなければなりません。
喫煙や飲酒、肥満、加工肉を良く食べるのも大腸がんの発症要因になりやすいです。近年、大腸がんの罹患者数が増加しているのは、脂肪分の高い食事など、食生活の欧米化による影響があるとされています。

検査方法

前がん病変になり得る大腸がんや大腸ポリープは、発生したばかりの小さい状態でも大腸内視鏡検査で早期発見・治療が可能です。
40歳を超えた方は、便潜血検査で陰性であったとしても、一度大腸カメラ検査を受けることをおすすめします。

大腸ポリープ

大腸ポリープとは、大腸の粘膜に発生する隆起した組織の総称です。大腸ポリープには腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープがあります。腫瘍性ポリープである腺腫は、前ガン病変とも言われており、大きくなると将来的にがん化する可能性も増していきます。
非腫瘍性ポリープには、炎症性、過形成性、過誤腫性の3つの種類があります。どれも基本的にがん化の危険性は少ないですが、過形成成性で大きい場合は切除する必要があります。

血便・便潜血陽性

消化管から出血して、便に血が混じっている場合は、顕微鏡的血便と肉眼的血便の2タイプに分かれます。血の混ざりがあるかどうかが見た目で分かる便が、肉眼的血便です。
一方、顕微鏡的血便は目視だと判別がつかないくらい僅かな血液が混ざっており、この顕微鏡的血便かどうかを判断する検査を便潜血検査と言います。以前行われていた化学的便潜血検査は、口にした鉄剤、肉類などに反応して、擬陽性になるケースが多数ありました。
今では、人が持つヘモグロビンに反応する免疫学的便潜血検査が主に行われています。また、免疫学的便潜血検査は検査前に食べる物を限定したり、控えたりしなくても良いのもポイントです。
大腸がんのスクリーニング検査として、健康診断で行なわれることが多いですが、消化管から出血しているかどうかを確かめる検査でもあります。出血があったらその原因を明確にするためにも、精密検査が必要です。

検査方法

ご自身で便を取り、提出して頂いたものを検査します。便の採取に関しては、1日1回の採取を2日連続で行う2日法が行われています。
採取キットには便の取り方や注意事項が記載されている説明書が添付されていますので、採取を行う時は、その説明通りに行ってください。

検査の結果が陽性だった場合

便潜血検査で陽性だと判断された場合は、消化管の中で出血を起こしています。陽性の時に可能性がある疾患として考えられるのは痔核や切れ痔などの肛門疾患、炎症性腸疾患、そして大腸がんや大腸ポリープなどがあります。
なお、もう一度便潜血検査を行い、陰性と判断されたとしても病気の発生リスクが無いとは言えません。
前がん病変になり得る大腸がんや大腸ポリープは、早期の微細な状態でも大腸内視鏡検査で発見でき、確定診断が可能です。
精密検査によって大腸がんが確認される可能性は5%前後だとされていますが、便潜血検査で発見出来た大腸がんは、比較的に負担の少ない治療で完治出来る可能性があります。精密検査を受ける事は患者様の安心にも繋がりますので、陽性の結果が出た方は、出来るだけ早く受診することをおすすめします。

過敏性腸症候群

腸管に炎症などの器質的障害が無く、機能的な異常が症状を招いてしまっていると考えられています。過敏性腸症候群の主な症状としては、下痢や便秘といった便通異常、膨満感や腹痛などの腹部症状です。
なお、腸は自律神経によってコントロールされており、その関係から、日常生活でのストレスや緊張が原因となり、激しい下痢や強い腹痛などを起こしやすく、学業やお仕事、そして生活上で深刻な支障をきたすケースが多いです。
特に20代から40代までの方に発生しやすく、この疾患の疑いがあったら、なるべく速やかに受診して、状況に応じた適切な治療を受ける事が重要です。

原因

様々な原因が影響を与えて、症状が出てしまう場合が多いといわれています。
生活習慣やストレス、消化菅の蠕動運動の異常、腸の知覚過敏による影響などが、この疾患の要因として指摘されています。

症状

便通異常に関しては下痢型、便秘型、混合型、その他のタイプの4タイプに分けられています。便秘型は排便時に力を入れても、硬く小さい便しか出ずに残便感があり、腹痛も併発しやすいです。
一方、下痢型は突発的に強い腹痛に襲われて、その後激しい下痢をします。混合型はその名の通り、便秘と下痢を繰り返します。
その他のタイプとしては、お腹にガスが溜まり膨満感があったり、無意識にガスが出てしまう症状があります。また、タイプに関係なく、下腹部の痛み、不快感、吐き気などを催したりすることが多く、肩こりや頭痛、めまい、睡眠障害、動悸、不安、イライラといった症状も同時に発生することがあります。

診断

まずは問診で症状について詳しく伺います。ただし、過敏性腸症候群の症状は、他の大腸疾患や内科的疾患と似通っている傾向があります。
その関係から、血液検査を行い炎症が起きているかどうか確認し、大腸内視鏡検査で大腸粘膜に病変が無いか検査を行います。検査を通して、他の器質的疾患に該当しなかった場合は、過敏性腸症候群と診断されます。

治療

症状を緩和させる治療を中心に進めていきます。薬物療法は排便時の水分量を調整するための薬や消化管運動機能調整薬などを処方します。加えて、不安を抑える薬や抗うつ剤などが有効な場合もあります。更に食事療法、生活習慣の見直しも重要です。
刺激物やアルコール、脂肪が多く含まれた食品を控えて頂き、乳酸菌食品や食物繊維を積極的に取って頂きます。また、特定の食品で症状が起こっている場合は、その疑いのある食品を避けるようにしてください。
過敏性腸症候群の時は、暴飲暴食を避けて、朝昼夜の3食を決まった時間帯でとり、休息や睡眠をしっかり取りましょう。
そして、運動や趣味で上手にストレスの発散を行うのが大切です。

潰瘍性大腸炎

大腸粘膜に慢性的に炎症が発生してしまう疾患です。びらんや潰瘍が起きて、粘血便、下痢や血便、腹痛などの症状を招きます。そして、状態が深刻化していくと1日で血便や粘血便が10回以上出ることもあります。
潰瘍性大腸炎は、再燃期という症状が酷くなる期と、寛解期という症状が改善する期が繰り返され、治療では寛解期を長く維持することが大切です。また、肛門に近い直腸から深部方面に拡大しやすい傾向があるので、炎症がどのくらい広がっているのかを定期的に観察することも重要です。
現時点では、はっきりとした原因がわかっておらず、根治に導く治療法がないため難病に指定されています。しかし炎症は適切な治療をすればコントロール出来るので、発症前とあまり変わらない生活を送れる場合もあります。合併症としては、腸壁に穴が開く穿孔、腸管が拡がる中毒性巨大結腸症、がんなど深刻な疾患を起こすことがあるため、慎重に経過を確認しながら、適切な治療を続けることが重要です。
幅広い年代で発症しますが、比較的に若い世代での発症が多い傾向があり、患者数自体は欧米よりかなり少ないですが、近年増加しています。

原因

細菌やウィルス感染、食物アレルギーの影響などが原因として疑われてきましたが、明確な原因は明らかになっていません。現在では、遺伝的な要因、免疫異常、食べ物・腸内細菌叢・環境因子などが重なり、発症していると考えられています。

症状

粘血便、下痢や血便、腹痛といった症状が現れ、1日に10回以上も血便、血性下痢、粘血便が起きる事もあります。

診断

症状の内容、症状が表面化し始めた時期、これまでの病歴、日頃服用している薬などに関して、問診で伺います。また、便潜血検査で血便があるかどうか、血液検査で炎症反応があるかどうかを確認します。
これらを踏まえた上で、大腸内視鏡検査で腸粘膜がどのようになっているかを観察します。特徴的な病変があるかどうか、どの程度まで範囲が拡大しているのか確認します。

治療

炎症抑制や免疫異常を是正する5-アミノサリチル酸製剤による治療を行います。炎症が重度な場合では、ステロイドなどを使用し、速やかに改善に導くこともあります。炎症が何度も起きる場合や炎症が治まらない場合は免疫調節剤の使用、そして血球成分除去療法を検討する事もあります。
重い合併症が併発している場合、治療を行っても効果が見られない場合では手術を検討する事もあります。症状を再燃させないためにも継続した治療が必要不可欠です。炎症の範囲が拡大した全大腸炎型の場合では、大腸がんが併発する可能性が高くなります。
一定期間毎に内視鏡検査を受けることで炎症の範囲を正確に把握でき、適切な治療が可能になります。大腸がんを早期発見するためにも、定期的に大腸内視鏡検査を受けることが重要です。

クローン病

口から肛門までの消化管において、慢性的な潰瘍が発生する疾患です。病変は大腸と小腸にでき、深くて特徴的な形の潰瘍が発生します。
このクローン病で発生する主な症状は下痢、血便、腹痛です。また、症状が現れない寛解期と症状が起こる再燃期を繰り返すのが特徴です。
原因がはっきりと分かっておらず、根治に導く治療法がないため難病に指定されており、潰瘍性大腸炎と似ていますが異なる疾患です。
クローン病は食事制限や栄養療法が必要になることもありますので、気になる方はすぐに受診して正確に鑑別してもらうことが大切です。この疾患は10代~20代の若年層を中心に発症数が多く、患者数は増加傾向にあります。

原因

ウィルスや細菌の感染、食物アレルギーの影響などが原因と指摘されてきましたが、まだ原因が何なのかはっきりと分かっていません。
現状では、遺伝子異常が背景にあり、細菌や食事の成分、ウイルスに対する免疫の異常反応が起きていると考えられています。

症状

症状のない寛解期と症状が起こる再燃期を繰り返し、主な症状は発熱、下痢、体重減少、血便、腹痛などがあります。
他にも痔や口内炎などの消化菅の様々な部分に病変ができることもあります。なお、炎症が特に発生しやすいのは大腸と小腸の境目の周辺で、大腸のみ、または小腸のみに病変が見られた場合と、その両方に病変が見られる場合もあります。瘻孔、狭窄、膿瘍等の腸管の合併症を伴うことも多いです。
長期間に渡り再燃を繰り返すと、手術が必要になる可能性が高まり、消化菅以外の部分に合併症が現れる場合もあります。

診断

症状の内容や症状が出始めたタイミング、これまでの病歴、普段服用している薬などについて問診で伺います。
さらに、便潜血検査で血便があるのか、血液検査で栄養状態や炎症反応があるのか、大腸内視鏡検査で腸粘膜の様子などを確認します。
CT検査によるデータが重要になる場合もあり、こうした検査の結果で、総合的に診断します。CT検査が必要と判断した場合は、連携施設をご紹介いたします。

 

治療

炎症を鎮静化させて症状を改善させることと腸管の炎症によって不足してしまった栄養様態を改善することが大切です。
状態が悪いときは腸管の安静目的に絶食と中心静脈栄養が必要になることがあります。症状が安定していても、低脂肪・低残渣の食事が推奨されています。
治療により症状が改善すると、通常の食事を行うことも可能ですが、再度悪化につながるような成分が入っているものを摂取しないように注意することが重要です。炎症を抑えるための薬物療法は5-アミノサリチル酸製剤を主に処方します。炎症が強い場合は、短期間で炎症を鎮めるためにステロイドを使用します。
また、寛解の維持に免疫調節剤を使用する場合もあります。現在では抗TNF-α抗体による炎症の治療が可能で、効果的な治療が行えます。長期管に渡り再燃を繰り返して腸の狭窄を起こしたり、腸壁から他の臓器へ管状のトンネルができる瘻孔がある場合は、手術も検討する必要があります。

便秘

便秘の定義は、体外へ排出すべき糞便を十分な量かつ快適に排出できない状態です。排便の回数が減少するだけでなく、便の硬質化や肛門に力を入れても排便しづらい排便障害も大きな問題です。
便秘の時は、膨満感、残便感、腹痛などの症状を伴う場合も多く、大腸疾患の症状として現れる場合や痔や大腸疾患などの原因になることもあります。
大腸がん、クローン病、膠原病といった原因疾患があるかどうかを確かめることが重要です。また、過敏性腸症候群の便秘型、薬剤性便秘症の可能性もあります。

関連疾患

下痢

水分量が多い便や水のような便が1日に3回以上でる場合は下痢とされています。下痢は腸管で水分が十分に吸収されていないか、もしくは腸管に水分が過剰に分泌され過ぎている時に発生します。
なお、乳糖不耐症によって発生する下痢は、浸透圧性下痢に分類されます。薬剤が原因となったり、ストレス等の精神的要因、膵臓疾患でも起こることがあります。
他にも蠕動運動亢進の影響を受けて発生する腸管運動異常性下痢、細菌の毒素の影響で発生する分泌性下痢、粘膜の炎症により発生する滲出性下痢などに分類されます。
潰瘍性大腸炎、クローン病、感染性腸炎、薬剤性腸炎、過敏性腸症候群、慢性膵炎、大腸がんなどを含めた様々な疾患の可能性が考えられます。

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